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トップ大学スピンアウトスタートアップにZoom Inシリーズ:Oxford University

こちらの記事シリーズではスタートアップを多く輩出している著名大学のスピンアウト企業を取り上げて行きます。今回はTimes Higher Education World University Rankings2024で1位に輝き、数々の著名人を輩出しているイギリスの【Oxford University】についてまとめてみました。

Oxford University

Oxford Universityは、イギリスのオックスフォードに位置し、独自に財源と組織を持つ独立したカレッジとホールから構成される総合大学。1096年時点で同地において教育が行われていた記録が残されており、英語圏で最も古い歴史を誇る。イギリス国内ではケンブリッジ大学と並んで高等教育を提供し、2024年までに卒業生30人が英国首相として活躍するなど、政治家、企業家などを筆頭に多くの著名人を輩出している。


文学や言語学に特化したHumanitites Division、数学や物理を専攻するMathematical, Physical & Life Sciences Division、医学に特化したMedical Scieneces Division、社会科学を専門とするSocial Sciences Divisionsの4つのアカデミック部門が存在するOxford University。由緒正しき歴史と幅広い教育体制を持つ中でスタートアップ輩出に向けどういった仕組みで支援しているのか、本記事ではその仕組みといくつかのスタートアップを紹介していきたい。

Oxford Universityの起業家エコシステム

同大学のエコシステムに寄与する団体は主に2つあり、それぞれ概要に触れていく。

Oxford University Innovation
大学の100%子会社として、IP商用化に関するサポート、学術的知見をパブリックセクターに共有する機会提供サービスに加え、投資家向けサポートも提供し起業家と投資家をつなげる橋渡し役も兼ねている。21年の収益は2,150万ポンドをあげ、大学および研究者に還元。また、同年には31社が同社のサポートを受け設立され、特許と出願は4455件にも及ぶ。

Oxford Science Enterprises
文字通り、理系分野に特化かつオックスフォードにゆかりのある企業へ投資を行う。
投資、というスタートアップにとって必須な援助も行う一方で、必要なタレントの招聘やPR戦略の考案、業界キープレーヤーとのコネクトなど多岐にわたる援助方法でスタートアップの成長に寄与する。領域はDeep Tech、Health Tech, Life Sciencesの3つに絞ったポートフォリオ展開をしている。このようなエコシステムに支えられ、オックスフォード大学はケンブリッジ大学と並び英国内で最もスピンアウト輩出が多い大学である。一方で、株式保有率に関する両大学のポリシーの差が見られ、あるデータによればオックスフォードは当初平均24.3%を保有するが、ケンブリッジでは12.6%のみで、両校の対応が異なることは明確である。過去の事例としては、量子コンピューティング関連企業であるQuantum Motionは2023年にシリーズBで4,200 万ポンドという大規模な調達を行ったが、調達後の時点で創業者が保有する株式は合計でわずか 4.6%で、一方オックスフォード大学が16%保有するという過剰な大学の保有率で話題になった。以前は50%の株式保有を強要していたが、現在は24%と減少気味。ただ依然として多いという意見も多く、創業者のモチベーションへの影響など今後の動向に注視されたい。

https://sifted.eu/articles/oxford-university-spinout-policies

Oxford Universityの2021~23年輩出スピンアウト企業

Oxford Universityは、上述のサポート体制とエコシステムを踏まえることで2021年から2023年までに36社のスタートアップを輩出した。今回はZUVAのデータベースを活用して2021~23年のスピンアウト企業をまとめたカオスマップを作成した。

次のカオスマップの主要なカテゴリは次の6つに分類されている。

・Biotech&Pharma:バイオ領域と製薬関連の価値提供をする企業
・Digital Health & Wellness:デジタルヘルスとウェルネスに関するサービス提供企業
・AI & data analysis:AIとデータ分析に特化した企業
・Genomic & data analysis:遺伝とデータ分析に関するサービス提供企業
・Environmental & sustainability solutions: 環境貢献と持続可能なソリューションを提供する企業
・Research & development services:研究や開発サービスを行う企業

注目すべきOxford University スピンオフ スタートアップ3選

ZUVA編集部にて2021年から2024年にOxford Universityからスピンアウトしたスタートアップの中で注目の企業を3社ピックアップしました。

  • Glox Therapeutics【AI】天然由来のバクテリオシンに基づく精密抗生物質療法の開発に先駆的に取り組む
  • Caeruleus Genomics【Genomic and Data analysis】機能的細胞プロファイリングと新規ターゲット探索のエンジンを構築
  • Lumai【AI and Data analysis】3D光学技術を活用した世界最先端のAIプロセッサを開発。オプティカル・コンピューティングのスケールアップに貢献

Glox Therapeutics【Biotech&Pharma】天然由来のバクテリオシンに基づく精密抗生物質療法の開発に先駆的に取り組む

【企業名】Glox Therapeutics
【ラウンド】Seed Round
【設立年】2023年
【業種】##Biotechnology #Product Research
【投資家】-Boehringer Ingelheim Venture Fund Scottish Enterprise
【主要拠点】Glasgow, Glasgow City, United Kingdom
【累計資金調達額】$5.37M
(画像参照:https://gloxtherapeutics.com/)

University of Glasgowのウォーカー教授とUniversity of Oxfordのクレアンソン教授が所属するそれぞれの研究室における活動内容を推進するために設立されたGlox Therapeuticsは、薬剤耐性病原菌をターゲットとする精密に設計されたタンパク質バクテリオシンを開発している。同社の技術は20年以上の研究に裏付けられた専門知識からバクテリオシン開発を行なっている。


Caeruleus Genomics【Genomic and Data analysis】機能的細胞プロファイリングと新規ターゲット探索のエンジンを構築する計算バイオテクノロジー企業

【企業名】Caeruleus Genomics
【ラウンド】pre_seed
【設立年】2022年
【業種】##Biopharma #Biotechnology #Genetics #Precision Medicine
【投資家】Creator Fund
【主要拠点】Oxford, Oxfordshire, United Kingdom
【累計資金調達額】-

(画像参照:https://www.caeruleus.bio/)

NDORMS(Nuffield Department of Orthopaedics, Rheumatology and Musculoskeletal Sciences)を起源にもつCaeruleusは、独自のテクノロジーとデータサイエンスを通じてトランスクリプトームを解明する精密医療企業。独自のシーケンシング技術を持ち、細胞レベルの解像度で完全なトランスクリプトームの正確な特性評価を可能にしている。


Lumai【AI and Data analysis】3D光学技術を活用した世界最先端のAIプロセッサを開発。オプティカル・コンピューティングのスケールアップに貢献

【企業名】Lumai
【ラウンド】non_equity_assistance
【設立年】2022年
【業種】 #Artificial Intelligence (AI) #Machine Learning

【投資家】Intel Ignite, Innovate UK, IP Group, Runa Capital
【主要拠点】Headington, Oxfordshire, United Kingdom
【累計資金調達額】$3.69M

(画像参照:https://lumai.co.uk/technology/

Oxford Universityにて量子光学の研究を行うルヴォスキー教授のクラレンドン研究室で基礎技術の研究を行っていたLumaiは、AIやマシンラーニングが世の中で普及することを目指し、必要なチップ能力を提供するために3D光学技術を活用し、最も早い計算速度を誇るAI処理を実現。開発者支援キットも提供し容易なシステム設計サポートも行う。2023年、Innovate UK Smart Grantを獲得した際にはOxford University Innovationのニュースリリースとしても特集された。

参照:
https://innovation.ox.ac.uk/news/oxford-spinout-lumai-bags-1-1m-grant-power-optical-computing-revolution/ 
https://users.physics.ox.ac.uk/~lvovsky/ 


このようにあらゆる学閥を持ち幅広い範囲にてスピンアウトを輩出しているOxford Unicersityであるが、その学術的知見を踏まえた高い専門性を持つスタートアップが輩出される一方で、エコシステムや大学の株保有率のような課題も散見される。今後、どのように課題に対処しながらスタートアップ輩出に貢献していくのだろうか。今後も目が離せない。

2021~23年のOxford Universityスピンアウト企業のリストをご希望の方はこちらからご連絡ください。

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Zuva Nicole

幼少期をデンマークと韓国にて過ごし、慶應義塾大学にて学士、ジュネーブ国際開発高等研究所にて修士。 世界最大の起業家支援ネットワークであるEndeavor Japanにて国内外のVCやスタートアップの調査業務に従事後、在欧州大使館にて日本企業支援を担当。150万社の先端的な技術を持つ企業データを保有する日本発スタートアップZUVAでは調査業務の他、パートナーシップデベロップメントやPR業務の統括を行う。

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