注目すべきケミカルリサイクル スタートアップ5選

ケミカルリサイクルの必要性
ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを化学的に分解することで分解油や合成ガス、モノマーといった化学原料に戻し、再利用可能な物質にすることである。これによって新たなプラスチック製造も抑制できるため、限りある資源の消費量削減に貢献する。代表的なケミカルリサイクルの手法では、解重合/再重合の間に異物、異種材質が取り除かれるため、バージン樹脂と同等の高品質なリサイクル樹脂に再生することができる。そのため、マテリアルリサイクル*では使用が困難な汚れたペットボトルの水平リサイクル(元の製品へのリサイクル)も可能である。
*マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックをそのまま原料にして別の製品を作ること
市場の成長予測
Market Research Futureによると、ケミカルリサイクルサービス市場の規模は2024年に$15.71Bと推定されており、2025年の$17.11Bから2034年には$36.99Bに成長すると予想され、年間複合成長率(CAGR)は、約8.9%になると予測されている。成長要因の一つは、プラスチック汚染に対する懸念の高まりと厳格な政府規制が需要を促進していることである。

(画像参照:https://www.marketresearchfuture.com/uploads/infographics/Chemical_Recycling_Service_Market_1.png)
(参照)
https://www.marketresearchfuture.com/reports/chemical-recycling-service-market-24878
注目すべきケミカルリサイクル スタートアップ5選
Resynergi マイクロ波アシスト熱分解によるプラスチックリサイクル

【企業名】Resynergi
【ラウンド】Series B
【設立年】2015年
【業種】#Environmental Consulting, #Renewable Energy
【投資家】Lummus Technology, Taranis Investment, Transitions First
【主要拠点】Rohnert Park, California, United States
【累計資金調達額】$24.4M(2025/2月時点)
(画像参照:https://cdn.prod.website-files.com/667ef15fab589e2a39bfb5e3/67c9cc11722db03a125da794_Resynergi_Modules_Factory_Interior_Shot-p-800.jpg)
Resynergiは、持続可能なプラスチック循環経済を実現すべく連続マイクロ波アシスト熱分解(CMAP)技術を開発している企業である。この技術は従来の熱分解法と異なり、マイクロ波でプラスチック分子を効率的に分解し、これまでリサイクルが難しかったHDPEやLDPE、PP、PSなどのプラスチックについても従来比20倍~100倍の速度で処理することができる。また、従来のポリマー生産比で最大68%もCO₂排出量を削減することが可能である。
(参照)
https://esgjournaljapan.com/world-news/35539
https://www.resynergi.com/our-technology
https://www.lummustechnology.com/news/releases/press-2024/lummus-and-resynergi-announce-commercial-availability-of-microwave-powered-plastic-pyrolysis-technol
MacroCycle プラスチックの分子構造の再編技術

【企業名】MacroCycle
【ラウンド】Seed Round
【設立年】2023年
【業種】#Plastics and Rubber Manufacturing, #Recycling
【投資家】Clean Energy Ventures, Indorama Ventures, KdT Ventures, Neotribe Ventures, Volta Circle
【主要拠点】Cambridge, Massachusetts, United States
【累計資金調達額】$7.58M(2025/2月時点)
(画像参照:https://cdn.tech.eu/uploads/2025/02/commercially-traded-waste-feedstock-left-macrocycles-color-removed-and-upgraded-pet-right-436.jpg)
MacroCycleは、プラスチックの分子構造を再編し、プラスチック廃棄物を新品同様の品質に再生するリサイクル技術を開発している企業である。この技術では、従来のプラスチックリサイクルにおける粉砕・溶融・再生という流れと異なり、プラスチック分子を環状構造に変換するプロセスを導入することで、高温処理の工程を完全に省略することができる。また、PET生産比で80%のエネルギーを削減し、残り20%を再生可能エネルギーで賄う生産体系が実現される。
(参照)
https://www.plasticstoday.com/advanced-recycling/macrocycle-promises-recycling-using-80-less-energy
https://tech.eu/2025/02/06/macrocycle-raises-6-5m-for-cleaner-recycled-plastic
DePoly PETプラスチックとポリエステル繊維からの高品質原料生成

【企業名】DePoly
【ラウンド】Seed Round
【設立年】2020年
【業種】 #Chemical, #Recycling
【投資家】Angel Invest, BASF Venture Capital, Beiersdorf, Founderful
【主要拠点】Sion, Valais, Switzerland
【累計資金調達額】$18.13M (2023/6月時点)
(画像参照:https://cdn.tech.eu/uploads/2023/06/untitled-design-6-861.jpg)
DePolyは、PETプラスチックとポリエステル繊維からの高品質原料を生成する技術を開発している企業である。この技術によって、従来のリサイクル方法では必要であった、予備洗浄・予備選別・予備溶解、そして他のプラスチックや材料の分離をする必要がなくなっている。また、高温高圧の特殊な環境ではなく室温と標準圧力下で家庭用レベルの安全な薬剤を使用するだけで、化石燃料から新たに作られる原材料と同等の品質を持った原料にリサイクル可能であるため、エネルギー効率と安全性の両面で大きなメリットがある。
(参照)
https://packaging.day/depoly-recycling-technology-for-plastics/
https://cbit-startup.jp/assets/pdf/depoly_cs_min.pdf
Wastefront 酸素なしの高温環境での廃タイヤリサイクル

【企業名】Wastefront
【ラウンド】corporate_round
【設立年】2019年
【業種】 #Pollution Control, #Recycling, #Waste Management
【投資家】International Airlines Group (IAG), VTTI
【主要拠点】Oslo, Oslo, Norway
【累計資金調達額】$43.2M (2025/1月時点)
(画像参照:https://cdn.prod.website-files.com/651a649c4fa826fe82591c39/673497602068b4c8ee62217d_2024%20Gartner%20Cool%20Vendor.png)
Wastefrontは、廃タイヤのケミカルリサイクル技術を開発している企業である。Wastefrontの独自技術は「URAD(Ultimate Recovery of Advanced Derivatives)」と呼ばれる熱分解プロセスで、酸素なしの高温環境(400-700°C)で廃タイヤを分解する化学反応を連続的に行うことができる。この技術によって、廃タイヤを1トン処理すると2.5トンのCO₂削減可能であり、埋立タイヤを100%資源化できるため、タイヤ堆積による有害浸出水を防止することにも繋がっている。
(参照)
https://www.wastefront.com/technology
https://www.wastefront.com/
CIRCTEC 廃タイヤを用いた再生可能な燃料と循環型化学物質の製造

【企業名】CIRCTEC
【ラウンド】Venture Round
【設立年】2009年
【業種】 #Manufacturing, #Renewable Energy, #Sustainability
【投資家】A.P. Moller Holding, Novo Holdings
【主要拠点】London, England, United Kingdom
【累計資金調達額】$187.23M (2024/5月時点)
(画像参照:https://blog.zuva.io/wp-content/uploads/2024/06/infographic_24_05_21B-1536×829-1.jpg)
CIRCTECは、毎年大量に廃棄される使用済みタイヤを用いた、再生可能な燃料と循環型化学物質を製造している企業である。例えば、廃タイヤから無酸素熱分解技術を用いてつくる持続可能な船舶燃料や、タイヤ・ゴム・プラスチックに再利用できる高品質のカーボンブラック*を作っている。
*カーボンブラックとは、ほとんど全ての黒色製品に含まれる化石燃料をベースとする化学物質のこと
(参照)
https://novoholdings.dk/news/novo-holdings-and-a-p-moller-holding-back-circtec-a-leader-in-pyrolysis-for-sustainable-end-of-life-tyre-recycling-in-a-euro150-million-financing-round
https://www.circtec.com/
https://www.intralinkgroup.com/ja-JP/Insight/Newsletter/May-2024/85
https://www.paj.gr.jp/statis/faq/74
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