注目すべきバイオものづくり スタートアップ5選
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バイオものづくりとは?
バイオものづくり (Bio Manufacturing)は、微生物のDNA配列を改変して目的物質の生産を促進するプロセスのことを指す。具体的には、微生物や植物などの生物の代謝機能を利用して有用物質を生成する技術や、動物の細胞を用いて細胞自体を増殖・高密度化し、有用物質の基礎を形成する技術である。このプロセスにおいて、細胞内に存在する遺伝子やゲノムを編集または組み換えることで、有価物を生成したり、生産性を向上させることが可能となる。
バイオものづくりは食品や素材、医薬品などの業界で多く使われてきているが、近年では廃棄物処理やリサイクルへの応用もされており幅広い業界で活用されている。微生物の力を借りた生産は昔から行われてきたが、近年カーボンニュートラルへの取り組みが世界的に加速する中、CO₂を排出しない新たな生産方法の一つとして注目を集めている。
日本におけるバイオものづくり
戦後、歴史的に製造業が強かった日本にとっては注目領域となっており、日本政府は2030年までにバイオ×ものづくり分野で約53兆円の市場規模を目指すと発表している。2022年6月7日に閣議決定された新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画においてバイオものづくりは経済成長と社会課題の解決の二兎を追える イノベーションとして科学技術・イノベーションの柱の一つと位置づけられている。現在は微生物発酵プロセスによりつくられるタンパク質素材を開発するSpiber社等、画期的な技術を保有する企業を選定し、技術検証フェーズを全面的にサポートする等している。
バイオものづくりの活用例
バイオものづくりは、化学素材、医薬品、食品の各分野で多様な応用が進んでいる。化学素材においてはバイオポリマーや高機能素材等の植物由来や培養の技術を活用した新しい樹脂や繊維の開発が近年進められている。また、医療の領域では遺伝子組換え技術を用いて、特定のタンパク質を生産する細胞株を樹立し、これを培養して目的のタンパク質を抽出・精製するプロセス等が研究されている。この方法により、インスリンや抗体医薬品などの高品質な医薬品が効率的に生産されている。バイオ医薬品は、従来の化学合成薬に比べて副作用が少なく、特定の病気に対する治療効果が高いことが特徴である。
市場の成長予測と課題
経済産業省によると、バイオものづくりの市場規模は、2030年に46.2兆円、2040年には114.8兆円に達する見込みである。脱炭素・サステナビリティの文脈で注目度が高まったものの、依然として大きな技術的なブレークスルーはまだ見られていない。今後はAIなどの技術を活用したより効率の良いバイオものづくりのプロセスの開発が期待される。
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(画像参照:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/bio/pdf/019_04_00.pdf)
(参照)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/bio/pdf/019_04_00.pdf
https://stockmark.co.jp/coevo/bio-monodukuri
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/Kennkyuukaihatsu/whitebio/Biomanufacturing.pdf
https://axetimesbiz.com/articles/chemical-biomanufacturing-industry_market-research_202404#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%81%AE%E5%8B%95%E5%90%91
注目すべきバイオものづくり スタートアップ5選
iMicrobes 微生物を用いた再生可能原料の高価値な化学物質や材料への変換
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【企業名】iMicrobes
【ラウンド】Seed Round
【設立年】2014年
【業種】#Biotechnology, #Chemical
【投資家】National Science Foundation, First Bight Ventures, Universal Materials Incubator
【主要拠点】Alameda, California, United States
【累計資金調達額】$10.3M (2024/11月時点)
(画像参照:https://images.squarespace-cdn.com/content/v1/5f1e426a68df2a40e2e0ef49/9333269b-ee1e-45f6-872a-9614b3137910/iMicrobes_lab-040.jpg?format=500w)
iMicrobesは、エタノールやメタンなどの再生可能な原料を、微生物を用いて高価値な化学物質や材料に変換する技術を開発している企業である。この技術は、複数の化学反応を装置一つで組み合わせることによって、低エネルギーかつ低炭素での生産を可能にしている。iMicrobesはこの技術を用いてアクリル酸やバイオポリマーなどを開発している。これらの製品は、再生可能なバイオメタンを原料として使用することで、石油由来の製品と分子レベルで同一のものを、生産コストを30%から45%削減し、ネットゼロまたはネガティブエミッションで提供されている。iMicrobesは日本の化学系のVCであるUMIから出資を受けており、今後、日本の企業とやりとりする可能性がある。
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(画像参照:https://images.squarespace-cdn.com/content/v1/5f1e426a68df2a40e2e0ef49/5ade88c3-3ffc-418a-9182-f65a557e1a4e/Process+ABPDU+good.jpg?format=1500w)
(参照)
https://imicrobes.com/technology
https://imicrobes.com/
Cellevate 細胞成長表面積を拡大させる独自のナノファイバーによる効率的な化学物質製造
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【企業名】Cellevate
【ラウンド】Seed Round
【設立年】2014年
【業種】#Biotechnology
【投資家】European Innovation Council, Industrifonden, Onsight Ventures
【主要拠点】Lund, Skane Lan, Sweden
【累計資金調達額】$6.32M (2023/10月時点)
(画像参照:https://cdn.prod.website-files.com/62a66aa220a55155318447ce/66e97520b868a0045ba85258_nanofiber.webp)
Cellevateは、Cellevat3dTMと呼ばれる独自のナノファイバー*による生物学的な方法で有用な物質を効率的に生産するプラットフォームを開発している企業である。これによって、遺伝子治療や細胞治療、ワクチンなどの先進的な医療技術の製造プロセスを大きく改善する可能性を秘めている。Cellevat3dTMは、従来の細胞培養システムと比較して、細胞が成長できる表面積を最大60倍に拡大することによって、バイオリアクター(生物反応器)という装置での細胞の増殖と求めている目的物質の生産量を大幅に向上させることができる。Cellevat3dTMを活用した主要製品は、遺伝子治療に使用されるウイルスベクター**の生産を改善するマイクロキャリア***である。
*ナノファイバーとは、細胞が成長する足場として機能する非常に細い繊維状の構造体である。
**ウイルスベクターとは、遺伝子を細胞内に導入するためのウイルス由来の運び屋である。
***マイクロキャリアとは、細胞を培養するための微小な粒子状の支持体である。
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(画像参照:https://cellevate.com/wp-content/uploads/2024/10/Bio_SPbox_left_zoomRight_spher-1024×659.png)
(参照)
https://news.cision.com/let-em-know-ab/r/cellevate-closes-second-seed-round–raising-3-2-meur-to-enter-into-global-commercialization,c4036189
https://www.synbiobeta.com/read/cellevate-raises-eu3-2m-to-power-biomanufacturing-revolution
Prolific Machines 光を用いた細胞培養プロセスの制御・最適化
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【企業名】Prolific Machines
【ラウンド】Series B
【設立年】2020年
【業種】 #Biotechnology, #Health Care, #Life Science, #Therapeutics
【投資家】Breakthrough Energy Ventures, SOSV
【主要拠点】San Francisco, California, United States
【累計資金調達額】$97M (2024/6月時点)
(画像参照:https://framtiden.earth/wp-content/uploads/2024/06/20240608.webp)
Prolific Machinesは、光によって細胞の増殖・維持・分化や、タンパク質産生(遺伝子発現)などの機能を制御する技術を開発している企業である。この技術によって、細胞培養における高価な成長因子を用いずに高精度で再現性の高い細胞機能の制御ができる。この技術を活用したものとしては、大きなサイズの培養肉や高品質のサプリメントや乳児用調製粉乳向けのタンパク質、生産効率の高い治療用タンパク質などがある。これらの製品は、安定的に高い品質を確保しながらも、大きく生産コストを削減することに実現している。
(参照)
https://framtiden.earth/2024/06/08/prolific-machines/
https://www.atx-research.co.jp/contents/Prolific-Machines
NTx AI モデル開発プラットフォーム
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【企業名】NTx
【ラウンド】Debt Financing
【設立年】2015年
【業種】 #Biotechnology, #Health Care, #Health Diagnostics, #Manufacturing【投資家】New Mexico Economic Development Department
【主要拠点】Rio Rancho, New Mexico, United States
【累計資金調達額】$75.84M (2023/11月時点)
(画像参照:https://ntxbio.com/hs-fs/hubfs/DSC09974-1-B%20(2)-1.png?width=2000&name=DSC09974-1-B%20(2)-1.png)
NTxは、mRNAワクチンとタンパク質治療薬の両方に使用できる連続フロー合成技術を開発している企業である。この技術によって、危険な化合物や毒性の高い物質を容易に取り扱うことができ、また、省エネルギー・低環境負荷でかつ精密な反応制御が可能であり、少量多品種を量産化しやすい。そのため、完全性の高い複雑なmRNAベースのワクチンや治療薬を低コストで速く生産することができる。
(参照)
https://www.api-corp.co.jp/business/rd/flow.html
https://ntxbio.com/technologies
https://www.businesswire.com/news/home/20240918465558/en/NTx-Services-Launches-to-Supercharge-Next-Generation-mRNA-Research
Pow.bio AI制御の自動連続発酵
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【企業名】Pow.bio
【ラウンド】Series A
【設立年】2019年
【業種】 #Biotechnology, #Genetics
【投資家】Berkeley SkyDeck Fund, National Science Foundation
【主要拠点】Berkeley, California, United States
【累計資金調達額】$11.22M (2023/10月時点)
(画像参照:https://vegconomist.com/wp-content/uploads/sites/3/Pow.Bio-Team-jpg.jpg)
Pow.bioは、精密発酵原料のためのAI制御の自動連続発酵プラットフォームを開発している企業である。ひとつの設備である程度まとまった時間や操作単位で処理を区切り、原材料をこの区切りごとにまとめて投入するという従来の方法と比べて、生産性向上を5倍に成長させたり、バイオ製造のための設備投資と運用のコストを削減したりすることが可能とされている。Pow.bioは、MeliBioと提携してミツバチを使用しないハチミツを開発したりもしている。
(参照)
https://agfundernews.com/pow-bio-raises-9-5m-to-expand-continuous-fermentation-platform-says-smarter-not-bigger-bioreactors-will-unlock-economic-viability
https://vegconomist.com/investments-finance/pow-bio-9-5-m-reduce-high-costs-animal-free-ingredients/
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上記だけでなく、シリコンバレー駐在のベンチャーキャピタリストにて今後一大トレンドになる可能性のある最新の「イノベーションキーワード」を解説しています。
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