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トップ大学スピンアウトスタートアップにZoom Inシリーズ:ETH Zurich

こちらの記事シリーズではスタートアップを多く輩出している著名大学のスピンアウト企業を取り上げて行きます。今回は2023年に世界で一番多くスピンアウトを輩出したスイスの【ETH Zurich(スイス連邦工科大学チューリッヒ)】についてまとめてみました。

ETH Zurich

1855年創立のETH Zurich(スイス連邦工科大学チューリッヒ)は、スイスの北部チューリッヒに位置し、自然科学と技術の分野で世界をリードする工科大学の一つとして最先端の研究とイノベーションの領域において著名な大学の一つである。その卒業生には天才科学者アインシュタインやX線を発明したレントゲンなどがおり、歴史的にも多くの発明者を輩出している。

ETH Zurichは、自由、個人責任、起業家精神、幅広い視野をビジョンとして掲げ、ヨーロッパの研究開拓精神の伝統を大事にし、実用的なアプローチを行えるよう数学にも力を入れ、科学分野だけでなく、社会全体、経済全体の課題を解決に導く研究やそのための教育を提供することをミッションとしている。また、近年では研究成果の事業化(スピンアウト)に力を入れており、これまでに400以上のスピンオフ企業を輩出してきた(下記画像参照)。
この記事ではETH Zurichの輩出したスピンアウト企業やそれを支えるエコシステムについて触れていきたい。

(https://ethz.ch/en/industry/entrepreneurship/explore-startup-portraits-and-success-stories/uebersicht-eth-spin-offs.html)

ETH Zurichの起業家エコシステム

ETH Zurichは発のスピンアウトを輩出することを支えているのが、チューリッヒ工科大学の充実したサポート体制だ。同大学には2005年に設立された技術移転オフィス「ETHトランスファー」や、成功率を大幅に高める「パイオニア・フェローシップ」など、幅広い支援プログラムが用意されている。

その中でも一番多くのスタートアップが恩恵を受けているパイオニア・フェローシップは、ETH Zurichの研究者が博士論文や修士論文を商業化するための資金援助プログラムである。同プログラムでは、毎年12~15件のプロジェクトに最高15万スイスフランの資金が提供される。さらに、18ヶ月間、コーチング、ビジネストレーニング、ETHのインフラ(ラボ、ワークショップ、コンピュータリソース、オフィススペースなど)を利用することができる。

また、ESA BIC(欧州宇宙機関ビジネス・インキュベーション・センター)は、ETH Zurichと欧州宇宙機関(ESA)が共同運営する、宇宙関連の新興企業を対象としたインキュベーション・プログラムである。このプログラムでは、毎年10社の新興企業に最長2年間、20万ユーロの資金が提供される。また、コーチング、ネットワーキング活動、欧州全域の産業・研究ネットワークへのアクセスも提供される。

インキュベーションプログラム以外にも同大学にはETHアントレプレナー・クラブやスイスの投資家たちとマッチングが行われるインベスター・サミットなどを通じて、業界のリーダーや投資家とつながる機会を積極的に提供している。アントレナープログラムやパイオニア・フェローシップには先輩企業形も参加していることで、エコシステムに還元するような好循環ができている。このようなエコシステムがETH Zurichのスピアウト企業の輩出に大きく貢献していると考えられる。

ETH Zurichの2023年輩出スピンアウト企業

1990年以降数多くのスピンアウトを輩出してきたETH Zurichは、特に2023年に世界の大学の中で一番多くスピンアウト企業(43社)を輩出したことで注目を集めた。今回はZUVAのデータベースを活用して2023年のスピンアウト企業をまとめたカオスマップを作成しました。

注目すべきETH Zurich スピンオフ スタートアップ4選

ZUVA編集部にて2023年にETH Zurichからスピンアウトしたスタートアップの中で注目の企業を4社ピックアップしました。

  • 【AI】DYNIUS ビジネスニーズを解決する既成概念にとらわれない最先端の機械学習アルゴリズムを開発
  • 【電気工学&電子工学】4QT 重機械産業専用の高出力電気駆動装置
  • 【バイオテクノロジー&製薬】ATLyphe 患者の免疫系の力を利用する抗体ベースの治療薬を開発
  • 【情報通信技術】Akina 科学的根拠に基づいた遠隔エクササイズ治療ソフトウェアを開発

DYNIUS 【AI】ビジネスニーズを解決する既成概念にとらわれない最先端の機械学習アルゴリズムを開発

【企業名】DYNIUS
【ラウンド】N/A
【設立年】2021年
【投資家】N/A
【主要拠点】Zug, Zug, Switzerland
【累計資金調達額】N/A

(画像参照:https://dynius.ai/)

DYNIUSは、機械学習と生成AI技術を活用して、銀行・金融を中心としたさまざまな分野の業務効率を高めることに特化した企業である。同社のソリューションは、データ活用の最適化や支払照合などのプロセス改善に重点を置いている。

(参照)
https://dynius.ai


4QT 【電気工学】重機械産業専用の高出力電気駆動装置

【企業名】4QT
【ラウンド】pre_seed
【設立年】2022年
【投資家】Ciri Ventures, Climate Capital, Tiny VC, Unruly Capital
【主要拠点】Zurich, Zurich, Switzerland
【累計資金調達額】$5.46M (2023/12月時点)

(画像参照:https://shorturl.at/wVnXB)

4QTは、重機械産業専用の高出力電気駆動装置を製造しており、モーターとバッテリーに関する特許を取得している世界初の完全電動LFPバッテリー駆動ダンプトラックを開発した企業である。機能実証車両を含め、防衛・重機OEM、防衛関連企業、建設請負業者との取引実績がある。

(参照)
https://www.4qt.ch/technology
https://ethz.ch/en/industry/entrepreneurship/explore-startup-portraits-and-success-stories/uebersicht-eth-spin-offs.html


ATLyphe 【バイオテクノロジー】患者の免疫系の力を利用する抗体ベースの治療薬を開発

【企業名】ATLyphe
【ラウンド】Convertible loan
【設立年】2023年
【投資家】N/A
【主要拠点】Zurich, Zurich, Switzerland
【累計資金調達額】$0.18M (2022/2月時点)

(画像参照:https://shorturl.at/4kD2b)

ATLypheは、患者の免疫系の力を利用する抗体ベースの治療薬を開発する企業である。免疫反応を統合することで、従来の治療レジメンに代わる、より正確でより効果的な治療法を年齢や体力に関係なく全ての患者に提供して治療の成功率を高め、がん治療をより安全で効果的なものにすることを目指している。

(参照)
https://www.atlyphe.com/
https://www.startup.ch/atlyphe


Akina 【情報通信技術】科学的根拠に基づいた遠隔エクササイズ治療ソフトウェアを開発

【企業名】Akina
【ラウンド】Grant
【設立年】2021年
【投資家】Springboard Health Angels, Innosuisse
【主要拠点】Zurich, Zurich, Switzerland
【累計資金調達額】$3.77M (2023/10月時点)

(画像参照:https://shorturl.at/mKKRS)

Akinaは、自宅でのエビデンスに基づいたセラピーとお気に入りのエンターテインメントを組み合わせたソフトウェアを開発している企業である。カスタマイズ可能な治療計画を立てながら、AIがサポートする進捗レポートをもとに、インタラクティブなエクササイズを提供している。

(参照)
https://www.akina.health/en/providers
https://www.akina.health/en/home


最後に

このように情報技術からバイオテクノロジーまで幅広い範囲にてスピンオフを輩出したETH Zurichであるが、2023年には過去のスピンアウト企業も大きな資金調達を完了している。旅行のためのオンライン・プラットフォームを提供するGetYourGuideは、7000万スイスフラン以上の新たな資金調達発表し、検査用の自律型ロボットを提供するANYboticsは、5000万スイスフランの調達を発表。2024年にはETH Zurichの卒業生の更なる活躍が期待される。


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Zuva Nicole

幼少期をデンマークと韓国にて過ごし、慶應義塾大学にて学士、ジュネーブ国際開発高等研究所にて修士。 世界最大の起業家支援ネットワークであるEndeavor Japanにて国内外のVCやスタートアップの調査業務に従事後、在欧州大使館にて日本企業支援を担当。150万社の先端的な技術を持つ企業データを保有する日本発スタートアップZUVAでは調査業務の他、パートナーシップデベロップメントやPR業務の統括を行う。

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