注目すべきスペースデブリ スタートアップ5選
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こちらの記事では注目すべき【スペースデブリ】関連のスタートアップ5社を紹介いたします。
スペースデブリ(Space Debris)とは?
スペースデブリとは、軌道上で不要になった物体を指し、使用済みまたは故障した人工衛星やロケットの部品、塗料片、燃えカスなどが含まれる。特に、衛星の運用後に残った燃料による爆発や、デブリ同士の衝突から生じた破片が多くを占めている。JAXAによると現在地上から追跡されている10㎝以上の物体で約2万個、1cm以上は50~70万個、1mm以上は1億個を超えるとされている。
過去には、2009年に米国の通信衛星イリジウムがロシアの衛星由来のデブリと衝突するなどの衝突事故が発生している。微小デブリによる事故も多く、衛星の機能不全や軌道の変化が多く報告されている。また、スペースデブリが互いに、あるいは人工衛星などに衝突すると、それにより新たなデブリが生じる「ケスラーシンドローム」という現象の危険性が提唱されておりスペースデブリ対策の需要が高まっている。
スペースデブリ対策
スペースデブリの対策として世界中で「監視・観測」「防御」「除去・削減」といった技術の研究開発が進められている。「監視・観測」は、軌道上のスペースデブリを追跡し、その動きを把握するための技術のことを指しており、米国宇宙戦略軍(USSTRATCOM)や欧州宇宙機関(ESA)などが、デブリの位置や軌道をカタログ化し、衝突のリスクを評価している。
「防御」は、デブリから衛星や宇宙機を保護するための手段であり、デブリの衝突を避けるための軌道変更や、衝突時の被害を最小限に抑えるための設計が含まれる。例えば、衛星に衝突防止シールドを装備することや、デブリの動きをリアルタイムで監視し、必要に応じて軌道を調整する技術などが挙げられる。「除去・削減」は、既存のスペースデブリを物理的に取り除くための技術である。デブリを捕獲するためのロボティクス技術や、デブリを地球の大気圏に再突入させて焼却する技術などが代表として挙げられる。
市場成長予測と課題
Fortune Business Insightsの調査結果によるとスペースデブリ監視・除去市場は、2021年から2029年にかけて年平均成長率7.15%で拡大し、最終的に$1.5277B規模に達すると予測されている。この成長予測の背景には、人工衛星や宇宙ミッションの増加に伴うデブリ問題への対応強化がある。特に、低軌道衛星の利用拡大や商業宇宙産業の発展が市場を押し上げている。一方で、技術開発コストの高さや国際法規制の未整備が課題であるとされている。
(参照)https://orbitaldebris.jsc.nasa.gov
注目すべきスペースデブリ スタートアップ5選
LeoLabs 高精度レーダーによるスペースデブリの追跡・監視
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【企業名】LeoLabs
【ラウンド】Venture Round
【設立年】2016年
【業種】#Aerospace #Database #Mapping Services #Software
【投資家】AngelList, Dolby Family Ventures, GP Bullhound
【主要拠点】Menlo Park, California, United States
【累計資金調達額】$111M(2024年/2月時点)
画像参照(https://platform.leolabs.space/visualization)
LeoLabsは、スペースデブリをマッピングし、衛星との衝突を回避するための情報を提供する技術を開発する企業である。同社はすでにオーストラリアやコスタリカを含む世界の4カ所にレーダーを設置し、宇宙空間の状況を監視している。同社の特殊なレーダーは、地球の近くを回る小さな破片までリアルタイムで検出することができ、そのデータをインターネット経由で提供し、衛星が衝突を回避するための軌道修正を支援している。また、衛星を運用する企業や政府機関と連携し、宇宙ごみを管理する計画をサポートしている。同社は、航空自衛隊と提携し、最新のレーダー技術を活用した宇宙領域監視サービスを提供しており、安全な宇宙運用と衝突回避能力の強化を支援する。
(参照)
https://leolabs.space
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000101792.html
https://sorabatake.jp/27018/
Astroscale デブリ除去と衛星の運用延長サービスで持続可能な宇宙利用を推進
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【企業名】Astroscale
【ラウンド】Series G
【設立年】2013年
【業種】#Aerospace #Information Technology #Robotics #Space Travel
【投資家】Mitsubishi UFJ Trust & Banking,SBI Investment,SMBC Venture Capital
【主要拠点】Sumida, Tokyo, Japan
【累計資金調達額】$396.8M(2023年2月時点)
画像参照(https://astroscale.com/ja/services/active-debris-removal-adr/)
Astroscaleは、スペースデブリ除去と衛星の運用延長サービスを提供する企業である。商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」はデブリから約15メートルの距離まで接近し、デブリの撮像に成功している。また、大型衛星デブリへの接近・観測を行うミッション「ISSA-J1」も進行中であり、運用支援や再配置技術を確立している。さらに、Astroscaleは宇宙空間での人工衛星の寿命延長に向け、米宇宙軍と約$25.5Mの契約を締結し、燃料補給技術の開発を進めている。2026年までに試作機を提供する予定であり、これにより衛星の運用期間延長や持続可能な宇宙利用の実現が期待されている。
(参照)
https://astroscale.com/ja/
https://www.asahi.com/articles/ASRD91CZPRC1UHBI010.html
Kurs Orbital 衛星修理や燃料補給技術で軌道上メンテナンスを支援
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【企業名】Kurs Orbital
【ラウンド】Seed Round
【設立年】2022年
【業種】#Aerospace
【投資家】Credo Ventures,Galaxia,Inovo.vc,IQT,OTB Ventures,Generation Space Accelerator
【主要拠点】Turin Italy
【累計資金調達額】$4.05M(2024年/3月時点)
画像参照(https://kursorbital.com/arcap-module)
Kurs Orbitalは、衛星修理や燃料補給技術を提供し、軌道上でのメンテナンスを支援する企業である。衛星の寿命延長や再利用を可能にする技術を開発し、新たな打ち上げコストやスペースデブリ増加の抑制を推進している。同社は、独自のARCapモジュールを活用し、人工衛星の修理や軌道調整を行うシステムを構築している。また、故障した衛星の再利用を促進し、宇宙環境の持続可能性を高める取り組みを進めている。2025年の初打ち上げを目指し、実証実験を通じて技術の確立を目指している。
(参照)
https://kursorbital.com/
https://www.excite.co.jp/news/article/Techable_231908/
https://techcrunch.com/2024/03/06/kurs-orbital-led-by-former-head-of-ukraines-space-agency-closes-new-funds-for-satellite-servicing-tech/
Starfish Space ドッキング技術による衛星の寿命延長と修理
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【企業名】Starfish Space
【ラウンド】Series A
【設立年】2018年
【業種】#Aerospace #Manufacturing #Space Travel #Transportation
【投資家】Aero X Ventures, Booz Allen Ventures, Industrious Ventures
【主要拠点】Tukwila, Washington, United States
【累計資金調達額】$62.95M(2024年/11月時点)
画像参照(https://www.starfishspace.com/)
Starfish Spaceは、ドッキング技術を活用し、衛星の寿命延長や修理を行う企業である。自律的に運用可能な小型宇宙船「Otter」を開発し、軌道上での衛星の捕捉、位置修正、燃料補給、修理を支援している。同社の技術は、衛星の稼働期間を延ばし、廃棄やデブリ化を防ぐことで持続可能な宇宙環境の実現に寄与する。また、故障やトラブル発生時に迅速な対応を可能にし、衛星運用の効率化とコスト削減を実現する。インテルサットとの契約に基づき、2026年には商業サービスを開始し、軌道上サービスの新たな標準を確立することを目指している。
(参照)
https://www.businesswire.com/news/home/20240626644659/ja/
https://note.com/satellite_tombo/n/n2209424bf6a1
https://www.intelsat.com/newsroom/intelsat-starfish-space-reach-deal-for-satellite-servicing-mission/
D-Orbit 軌道投入やデブリ回収を支援する輸送・物流サービスを提供
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【企業名】D-Orbit
【ラウンド】Grant
【設立年】2011年
【業種】#Aerospace #Automotive #Fleet Management #Information Technology #Software #Transportation
【投資家】Department for Science, Innovation and Technology (DSIT), Avantgarde Finance, CDP Venture Capital
【主要拠点】Milan, Lombardia, Italy
【累計資金調達額】$197.88M(2024年/12月時点)
画像参照(https://www.dorbit.space/advanced-services)
D-Orbitは、軌道投入やデブリ回収を支援する輸送・物流サービスを提供する企業である。独自の宇宙輸送機「ION Satellite Carrier」を用いて、複数の人工衛星を効率的に異なる軌道へ投入するサービスを展開している。同社は、打ち上げ後の軌道修正や配置調整を最適化し、衛星運用の柔軟性とコスト効率を向上させている。また、デブリ除去や故障した衛星の安全な処分にも対応し、持続可能な宇宙環境の確保を推進している。
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